思い出のレトロな喫茶店

忘れられないレトロな喫茶店がある。
もう30年も前に行っていた店で、私は当時5歳。
連れていってくれたのは、私の母の叔父、つまり大叔父である。大叔父はその頃50代後半で子どももいなかったこともあり、私をとてもかわいがってくれた。
私を同伴していく喫茶店は大叔父とマスターの共同経営している店であり、大叔母も夜は出ていた。
私は昼間にしかいかなかったが、夜はお酒も出していたと思う。
昔の喫茶店は今のように入り口が透明なガラスではない。どういうわけか、暗い色のガラスがはまっていて、中は判然としない。
ドアを開けると、やはり明るい外から入れば薄暗く、なんとなく茶色の液体の中にいるようである。
レトロな焦げ茶色に光るカウンターに、背の高い革張りのスツールが並んでいて、でも、もっぱら私は窓際のテーブル席でオレンジジュースか、バニラアイスを足をぶらぶらさせながら味わっていた。
まだ5歳ではコーヒーに興味もなく、でも香りは好きだった。お客が少ない時間に行っていたのだろう、よくマスターが言葉少ないのににこやかに相手をしてくれた。
何か楽しいことをするわけでもないのに、何度も連れられて行ったのはあの秘密な大人の雰囲気に魅せられていたからだ。
子どもなりに騒いではいけないとわかっていたから、きょろきょろ、ぶらぶら、レトロな雰囲気を味わいに通った。
帰りに少しテーブルの茶色のお砂糖を弟と妹へのお土産に持って帰ったのも懐かしい。
その7年後には大叔父は亡くなり、お店も震災前になくなったと聞いた。
それでも心の中にはっきりと、あの空気が残っている。

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